LINEが、毎年恒例の事業戦略発表会「LINE CONFERENCE 2018」で、新たに開始するサービス『LINEトラベル』の提供を開始しました。
国内7500万人の月間アクティブユーザーを有するLINEが、旅行事業への本格参戦となります。
海外および国内旅行の比較検索を可能にするもので、まずは国内外の宿泊施設の予約から開始します。
10月に航空券、12月には国内外のパッケージツアーへと広げ、250社の予約サイトと連携します。
そして、旅行比較検索サイト(メタサーチ)ながら、ユーザーのタビナカをフォローする新たな事業モデルも検討します。
LINEの注力事業として2019年度に、流通総額1000億円を掲げました。
同社は2011年に「LINE」の提供を開始し、現在は「LINE」を入口に生活関連サービスのすべてを提供する「スマートポータル戦略」を掲げて事業を拡大しています。
昨年には「LINE」をすべてのショッピングの入口とするコンセプト「LINE Commerce gateway」のもと、「LINEショッピング」とフードデリバリーサービスの「LINEデリマ」の2つのサービスを開始しています。
これらに加えて『LINEトラベル』を新たなショッピング関連事業の柱としていきます。
『LINEトラベル』は国内最大級の旅行比較検索サービスとなる見込みで、当初はエクスペディア、Booking.com、Trip.com(Ctrip)、JTB、楽天トラベル、一休などと接続。
今後は検索対象を拡大し、年内には250以上の旅行会社や航空会社の比較検索を可能にするといいます。
『LINEトラベル』はアプリの追加インストールなどは不要で、「LINE」でのトーク中などに直接アクセスすることができるため、利便性が高いといいます。
「LINEショッピング」などと同様、積極的な機能改善やコンテンツ拡充を進める方針で、『LINEトラベル』の公式アカウントからユーザー向けに観光地の情報なども発信する予定です。
情報コンテンツについては旅行番組などとのコラボレーションも計画中です。
これまで、その可能性を否定していた同社が、旅行事業への参入を決めた理由と狙いは何か。
なぜメタサーチで参入?
旅行事業を担当するO2O事業室副室長の藤原彰二氏によると、方針が変わったきっかけは、LINEが2017年に打ち出したコンセプト「LINE Commerce gateway」で、コマース事業を注力事業として開始したこと。
LINEの得意とするプッシュ型マーケティングに対し、非日常の旅行は馴染まないとの考えがあったが、コマース事業でショッピングサービスの「LINE ショッピング」、フードデリバリーサービスの「LINE デリマ」を開始したことで、旅行は両サービスとの親和性があると判断しました。
『LINEトラベル』をコマース事業の3つの軸の1つとして、位置付けた。LINEトップページに上記2サービス同様、専用カテゴリで表示されます。
コマース事業内はもちろん、「LINE Pay」などLINE経済圏に入れ込むことを想定します。
ユーザーのあらゆる旅行シーンに関わり、「レコメンドするサービス」が、藤原氏が描く旅行事業の姿です。
タビナカではレジャー系だけでなく、「より市場規模が大きい」と期待するLINE飲食をはじめ、サロンやスパなどの扱いも視野に入れます。
ではなぜ、メタサーチでの展開なのか。
タビナカを狙うLINEにとっては、予約情報を持つOTA(※)の方がユーザーと繋がりしやすく、現地サービスとの連携がしやすいはずです。
※OTA(Online Travel Agent):インターネット上だけで取引を行う旅行会社
しかし、藤原氏は、「すでにユーザーは他のOTAサイトを使っている。それなら、メタサーチの方が「LINE ショッピング」の例で効果があることが分かっている」と判断しました。
しかし、すでにメタサーチも国内外に大手サイトの競合があります。
さらにメタサーチでは、ユーザーの行動を追いにくく、タビナカ参入で大きな成功を得ている先行事例は少ない。
この課題に後発のLINEがどのように挑み、どこに勝機を見ているのか。
レコメンド型のメタサーチとして展開
藤原氏があげた強みは2つ。
1つはLINE独自の位置情報を活用することで、「OTAに近い精度で、ユーザーの移動の形が分かるだろう」と藤原氏。
正確な数値は非公表だが、会員の多くが利用しており、「Bluetoothより常時オンしている人は多い」と、アプリ展開ならではの強みを強調します。
もう一つは、ユーザーID。
「ラインは常にログイン状態。これは既存のメタサーチにはない」と藤原氏。
「押さえたいのは、ユーザーの旅行に絡むスケジュール。旅先の気候にあわせて服装を提案したり、現地が雨天で予定のスケジュールがこなせない場合は別案を提示したり。現在地にあわせたレストランの提案や、次の予定を踏まえて出発時間が近づいたら教えるなど、レコメンド型のメタサーチとして展開したい」と構想を説明します。
さらに第2フェーズとして、「LINE Pay」のポイントバックを年内に開始する予定です。
これは、『LINEトラベル』のユーザー獲得と利用促進を目的とするものだが、ここでもLINEの位置情報を活用します。
従来のポイントバックはホテル到着後、3か月程度後に付与されることが多かったが、『LINEトラベル』ではユーザーのメリットを高めるため、位置情報で現地にいる確認を行ない、ホテル到着後すぐに付与する仕組みを作りました。
これは現在、特許出願中です。
加えて、現地で発信された口コミや写真に、ポイントを付与することも検討しています。
ポイントバックの原資はOTAのマーケティング予算を想定。
OTAでは、重要な流通チャネルとしてメタサーチに予算を持っているが、プル型の広告が主体のため、価格でしか差がつけられないという現状がありました。
この背景も踏まえた施策でもあります。
『旅行中(タビナカ)』の提案
旅行前の意欲喚起や予約、旅行中の現地アクティビティや食事などの提案、旅行中・後の写真や情報のシェアなどに『LINEトラベル』ですべて関与していく計画です。
「旅行前(タビマエ)から旅行中(タビナカ)、旅行後(タビアト)のサービスはこれまで断片的に存在していたが、シームレスにつなぐユーザー体験を提供する」と藤井氏は構想を語りました。
このうち『旅行中(タビナカ)』のサービスについては「マーケットは非常に大きいが、参入できる会社が少ない」との見方を示した上で、同社が障壁となっている位置情報取得の面で強みを持つことをアピール。
効果的なプッシュ通知などが可能であることを示しました。
例えば、旅行会社なら、顧客がいつ、どこに旅に出ているかを知っています。
フリープランの顧客なら、旅先では現地空港からの交通手段、地元名物が食べられる飲食店、観光スポットなど、旅行者が知りたい情報はたくさんあります。
こうした旅行者に適切なコミュニケーションを図ることで、満足度向上につなげることができるのです。
旅行は、持ち歩くスマートフォンとの相性が非常にいいため、今後の展開に期待できます。
晴天時に限らず、雨天の場合も想定したアクティビティの提案なども行っていきます。
UI/UXはデジタルネイティブの新卒2年目が担当
オンラインサービスは、UI/UX(※)の使い勝手も重要な選択要因の1つだが、今回LINE トラベルでこの重責を担ったのは、新卒入社2年目で同室ECサービスチームの本間洋也氏。
※UI:ユーザー インターフェイス(User Interface)の略で、ユーザーと製品・サービスの接触面を指し、ユーザー の目に触れる部分、使用する部分をUIとみなします。
※UX:ユーザー エクスペリエンス(User Experience)の略で、ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験を指します。
「中学生の時にSNSを使うのは当たり前だった」という、デジタルネイティブでアプリ世代である同氏の「ウェブベースよりアプリサービスに慣れている感覚と価値観」に新事業の表層が任されました。
『LINEトラベル』ではまず、エリアと宿泊日時と人数を指定して検索すると、予約可能な宿泊施設の検索結果が表示されます。
ここで表示されるのは、宿泊施設の画像を背景に、宿泊施設の名称と料金、ホテルランクの3つだけです。
施設をクリックして、詳細が見られるます。
つまり、自分にとって必要な情報だけ、詳しくみられるという仕組みです。
「旅行は好きでよく行くが、使用していたのは海外のオンラインサービスが多かった。それは知りたい情報だけが載っていて、利用しやすかったから。そういうサービスは日本に少なく、改善する余地はまだある」と本間氏。
ただし、「シンプルが正しいわけでもない。情報過多のなかでどれを届けるか、サービスの体現方法を考えていきたい」と、表層面でもLINEらしさを出していきます。
旅行比較「Travel.jp」と資本提携
『LINEトラベル』に、ベンチャーリパブリック社が運営する、月間訪問者数1500超ユーザーの旅行比較検索サイト(メタサーチ)「トラベルジェイピー(Travel.jp)」のノウハウを活用し、新たな旅行サービスの提供も行ないます。
2001年創業のベンチャーリパブリック社は、同年に旅行比較サイト「トラベルジェイピー」(旧:Travel.co.jp)サービスの提供を開始しました。
この分野では老舗ともいえる企業です。
LINE代表取締役社長の出澤剛氏は、Travel.jpのメタサーチ機能だけでなく、旅の専門家によるガイドページ(たびねす)を「タビマエ、タビナカを充実させるコンテンツ」とし、業務提携により「旅の思い出を共有する「タビアト」まで一気通貫して行なうことが可能となり、さらに最適なプラン提示と豊かな旅行体験を提供できる」としています。
これにより、Travel.jpのユーザーベースと650万点超の旅行商品データ、500人の旅の専門家による2万7000超の旅行ガイド記事が、LINEトラベル上で活用することが可能になります。
なお、資本・業務提携により、LINEはベンチャーリパブリック(資本金1000万円、2018年3月現在)に34%の出資を実施。
取締役3名と監査役1名を派遣し、ベンチャーリパブリックの取締役は計6名、監査役は2名となる。
ベンチャーリパブリックの代表は従来通り、代表取締役社長が柴田啓氏、代表取締役副社長は柴田健一氏が務めます。
2019年に目指す流通総額は1000億円
これは、昨年度開始したLINE ショッピングの今年度の目標流通総額と同額です。
しかし藤原氏は、「実は2017年11月から、LINE ショッピングでトラベルのテストを行なっていたが、この結果が素晴らしくよかった。1000億円は無理な数字とは思っていない」と自信を見せます。
すでに本番でのテストも行っており、期間中はショッピングで連携している楽天トラベルなどの予約サービスと繋いでいたといいます。
日本の人口の約6割という数字のユーザー数を持ち、そのうち85%が毎日アクティブにアプリを利用するユーザーを誇るLINEの本格参戦で、旅行市場の新たな転機となるか。
トラベル事業では、国内のみならず、海外展開も視野に入れていく広げていく予定です。
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